「一番人気」の馬は競馬をする人にとっては、とても気になる対象です。
堅い勝負が好きな人は、馬券購入の対象として、穴党の人には、高配当を期待するために外れて欲しい対象として、それぞれ見ているでしょう。
では、1番人気の馬はどんな特徴を持っていて、馬券購入の時にはどういう見方をするのが正解でしょう。
ここでは、一番人気の馬を「馬券」という目線で紹介します。
1番人気の傾向はブレにくい
一つ目の特徴として、1番人気の馬は傾向が安定します。
というのも、馬券を購入する人の大半は、
「1着の馬を当てる」
ことを目指しています。
これを意識すると、当然ですが強い馬ほど勝ち負けの判断を真剣に行います。
あなたも出馬表を見て、一番の主役になる馬を全く検討しないことはありえないでしょう。
むしろ、真っ先に1番人気になりそうな馬に対して、馬券の軸にするか、思い切って外すかを判断するはずです。
ほとんどの人が検討して、馬券も多く買われるので、データ的にも母数が増えて信頼できるようになります。
下の表は、2019年の障害戦を除いた1番人気の馬のデータです。
年度 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2019年 | 32.6% | 64.6% | 78 | 83 |
単勝回収率は平均の8割に少し届かず、複勝回収率は平均よりも良い数値です。
また、勝率は3割強、複勝率6割強で、これは、どの年度で見ても概ね同じです。
年度 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2018年 | 31.8% | 63.6% | 74 | 81 |
年度 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2015年 | 30.4% | 62.7% | 76 | 83 |
1つの要素が短期でこれだけ傾向が安定するのはかなり珍しいことで、一番人気という要素はかなり特別です。
単勝回収率が常に平均に届かない理由
1番人気の馬の傾向で面白いのは、平均の単勝回収率が常に平均回収率(8割)よりも(少し)低いことです。
これは、1番人気というものが、馬券購入者にとって過剰に魅力的に映っていることの表れで、総合的に実力よりも人気が先行しやすいことを意味します。
この傾向の理由は、1番人気の馬は、どうしても注目され、メディアでも取り上げられますし、リーディング上位の騎手が乗ることも多いことによります。
戦績も優秀で、持ちタイム、血統背景も良い可能性が高く、馬券購入者が買いたくなる要素が多いために、過剰に買われるのだと推測できます。
おまけですが、強い馬というのは、名前もカッコいいですしね。
1番人気の複勝回収率が高い傾向
もう一つの傾向として、1番人気の馬は、複勝回収率が平均よりも高くなる傾向が見られます。
これは、1番人気のオッズの低さに原因があります。
というのも、複勝の馬券を買う際、オッズが1.1倍となっていたら、馬の実力という観点とは関係なく、馬券購入を渋りませんか?
ぼくはこういった心理から馬券購入を見送る現象を「反作用」と勝手に呼んでいますが、おそらく、1番人気ではこのことが影響しています。
競馬は、勝ち負けを予想して楽しむものですが、お金が絡むギャンブルなので、儲からないと面白くありません。
穴馬券が当たれば100円が1万円になるのに、複勝で1万円を儲けるのに1.1倍の馬に10万円を突っ込むのは、リスクが高いと考えるのです。
1番人気は強い馬で、勝つ可能性が高い反面、当たっても儲けが少なく、外れた時にリスクが高いため、馬が強すぎると反作用が働きやすくなります。
1番人気の複勝馬券は、返しが少なくて「おいしくない」と考えて、あまり積極的に買わないので、結果的に人気ほど馬券は買われないことになりがちです。
逆の発想で確認してみましょう。
下の表は、2019年の障害戦を除いた10番人気以下の成績です。
年度 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2019年 | 0.9% | 4.5% | 62 | 64 |
複勝回収率が、平均の80を大きく下回っています。
「3着以内なら10番人気以下でも来るかもしれない」、
「3着以内で割とオッズも付くから」
という理由で積極的に買われるため、結果として実力よりも人気が先行します。
競馬のオッズは色んな理由で決まりますが、オッズそのものも、馬券購入にかなり影響します。
1番人気の勝率は思ったほど高くない
最初の表でも分かりますが、1番人気の勝率は3割強程度しかありません。
もちろん、1番人気といっても、単勝オッズが1点台から高い時には5点台もあるので、一概に1括りにはできませんが、総合的には3割程度だということです。
逆に言えば7割近くは2着以下に負けるわけで、冷静に考えると1番人気の馬に大金を投じるのが怖くなりませんか?
「1番人気にすべてを賭ける」
というとまあまあ可能性がありそうですが、
「7割負ける勝負にすべてを賭ける」
となるとイメージが違ってくるでしょう。
「1番人気」という言葉のイメージにだまされず、現実的な勝率は理解しておいた方が良さそうです。
1番人気の複勝率は高くなくても魅力的
一方の複勝率も6割強といったところで、逆に言えば3割強は連にも絡まないということです。
でも、単勝と違って、回収率は常に平均より上回るので、馬券購入の対象としてはあながち間違っていません。
特に単勝1点台の複勝馬券は、回収率が90に近く、単騎で平均を大きく上回ります。
2019年の単勝1点台の成績です。
年度 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2019年 | 48.8% | 80.3% | 78 | 88 |
1頭だけで投資を回収できるほどではありませんが、3連複馬券の軸や高期待値の軸馬のヒモとしてはかなり優秀と言えるでしょう。
3連複やワイド馬券のヒモ馬として3着以内に6割がくるなら、競馬を楽しむ意味でも魅力的です。
まとめ
今回は1番人気の馬について検証してみました。
全体的な傾向として、「1番人気」というイメージはかなり馬券購入が進む要因になっていて、単勝馬券としてはマイナスに働いている傾向が強そうです。
勝率も馬券購入者全体が抱くように、
「勝って当たり前」
ではないので、1番人気の馬だという理由だけで積極的に買うと、かなりの確率で損失が出るでしょう。
個人的には、ただでさえ、過剰評価されがちな1番人気の馬は、馬券に絡む期待よりも外れて欲しい対象としたほうが効率的だと思います。